全ての料理を作り終え、携帯を見るとめずらしく着信がある。
(僕の携帯はほとんど鳴らない)

「着信あり:ヒロシ」

ヒロシ?ヒロシってあのヒロシ?
コールバックしてみる。

ヒ「あー!もしもし、ケン?今どこ?俺ら新宿で飲んでんだけど、来る?」
僕「今、水戸」
ヒ「えっ?ミト?ミトって水戸?何やってんの?水戸で?納豆つくってんの?(笑)」
僕「店やってる」
ヒ「店?なに店って?」
僕「借金して独立したんだ」
ヒ「独立?マジで?スゲーじゃん!俺らさ今4人で飲んでんの。○○と○○と○○。覚えてる?」
僕「もちろん、覚えてるよ。懐かしい」

受話器の向こうからは居酒屋特有の人がうごめく音が何重にも響いてくる。生中と枝豆とナスの1本漬けと軟骨揚げと焼うどん。受話器の向こうからオタフクソースの香りがする。

全員と電話を替わり、「東京に来たら、連絡しろよ!集合すっから!」と言ってブツッと電話は切れた。

電話で喋ったのはいったいいつ振りだろう?
最後に会ったのはひょっとしたら卒業式の時かもしれない。
みんな元気そうだった。

「新宿から、随分遠くに来てしまった」

距離の問題ではない。
僕はなぜこの田舎でこんなにギリギリまで働いているんだろう?
不満はまったくない。
本当に、よくここまでたどり着いたと思う。

ただ可能性について考えると、2秒くらい思考停止してしまうだけだ。