「フルーツタルト」
製菓の専門学校なら真っ先に作りそうな、ちょっとお菓子作りが好きな方ならちょっちょいっと作れそうな、どこにでもある、誰にでも作れるような一品。
なんでこんなものを作るのにこんなに時間がかかるのか。休憩時間を削って、閉店作業が終わってから、宿題が終わらない小学生のように毎日居残り。持っている限りのレシピをひっくり返して、ああでもないこうでもないやっているうちに気づいた。
「本には作り方は載っているが、作り続け方は載っていない」
少し前にも書いたけど、一回こっきりしか作らないのであればちょっと無理すれば大抵のことは出来る。大変なのは作り続けることだ。
毎日でも焼けるようなオペレーションを組めるのか?
忙しくなっても続けられるのか?
ロスは出ないか?
原価は?
他のドルチェとの兼ね合いは?
冷蔵庫のキャパシティーは?
これで本当にお客さんからお金もらえるの?
睡眠時間は?休憩時間は?
本当に無理してやる意味ある?
別に普通のタルトだけれど、出来上がったときうれしかった。
僕は天の邪鬼だから、どこか少しぶっ壊れているものが好きだ。
楽譜を完璧にこなせるスタジオミュージシャンより、ヘタクソでも(いや、実際はぜんぜん下手じゃないんですけど)リンゴスターのドラムが好きだ。タメが効いていて、他の楽器を引き立てつつ主張もある。もちろん上手いに越したことはない。でもそれと心に響くこととはまた別なことだ。そういう瞬間に立ち会いたくて、こんなに面倒くさい店をやっているようなものだ。
