6:30

自然と目が覚める。暖房が効いているのに乾燥してない室内はかなり快適。ゆうべ風呂に入らず寝たので目覚めに熱いシャワー。

7:30

朝食。昨日と同じ内容。カプチーノは今日もちょっと薄くイマイチ。近くに座った白人が娘の事を興味深そうに見ている。きっと黄色人種の子供が珍しいのだろう。

9:00

「シチリアに出発する前に、山下くんを誘って近くのバールに行こう」ということになり、部屋まで誘いにいくと、彼もそう思ってくれていたらしく快諾される。そしてその場で彼が働いているイタリアンレストランが出したレシピ本を見せてもらう。写真や絵の質感、コメントなどとっても好きな感じ。日本に戻ったら是非行ってみよう。


ゆうべのピッツェリアの方に歩いていくとカウンターに何種類ものパニーニを積んだ店を発見。迷わず入るとお昼に向けておじさんが黙々と作っている。モッツァレラ/トマト/バジル、プロシュート/ルッコラ、グリルしたナス/ズッキーニ/チェダーチーズ等々、見てるだけでよだれが出てくるくらい旨そう。とりあえずカプチーノを注文。うん、旨い。味がしっかりしていて、ミルクとエスプレッソのバランスもいい。シチリア行きの飛行機の中で食べるためにパニーノを買っていく。

11:00

フロントでタクシーを呼んでもらって、山下くんに見送られながら出発。彼とはまたどこかで会えそうな気がする。彼が日本に戻ってくる2ヶ月後にはもう僕の店はオープンしているだろう。

11:40

ミラノ中央駅からプルマン(高速バス)でマルペンサ国際空港まで移動。娘は腹が減ったらしく、さっきのパニーノ(ハム/チーズ)をぱくついている。イタリアでも彼女の食欲はおさまるまるところを知らない。

12:30

空港に到着。国内線で、時間的に余裕があるので朝買ったパニーノをビールで流し込む。生ハム、モッツァレラ、ルッコラのパニーノとズッキーニ、ナス、ほうれん草、カマンベールのパニーノ。どちらも冷めていたけどとても旨い。生ハムがびっくりするほどしょっぱかったが、ちょっと安心する。ベーコンやパンチェッタ、生ハムは本来保存のための冷蔵技術が今ほど優れていなかった時代の知恵で生まれた食べ物。しっかり塩漬けして、時間をかけて乾燥なり、薫製させるから長持ちし、うまみが凝縮されている。でも日本で売っているそれらのほとんどは塩気の代わりに大量の保存量と旨そうに見せるための着色料で漬けられている。塩気を嫌がる消費者に媚びているのと、簡単に安定したものを作れるからなのだろうが、はっきり言って迷惑だ。こっちのハムやチーズはどれもしょっぱい。でも日本のものよりずっとおいしい。

14:25

ミラノ発カターニャ行き、定刻通り出発。easyJetという格安航空会社で、機内のサービスが全くない分とても安い。途中、機内で買ったトマトジュースがトマトを飲んでるみたいに凄く濃厚。旨い。そして、窓の外から地中海のきれいな景色が見える。青い海、遠くに見える島。

16:20

シチリアの東、カターニャ空港に到着。デッキに降りるといきなり暑い。そりゃそうか。北海道から九州に来たようなものだ。

出口に今回の旅でお世話になるAKIさんとパートナーのFRANKが出迎えに来てくれている。シチリアでの最初の3日間はシラクーサという街のフランクの友人のフィリッポのB&B(ベッド&ブレックファースト)に滞在するが、フィリッポがベルギーに出張中のため、部屋の鍵をAKIさんが僕らに渡してくれることになっていたのだ。AKIさん達と、4日後の再会を約束して別れ、バスの時間までバールで食事をとることに。ここのパニーノも見事においしい。きっとひとつひとつの食材がいいからだろうな。

終止こんな格好で歩き回る

17:40

すっかり辺りは暗くなった頃にシラクーサ行きのバスが出発。バスは結構混んでいて、外に見える景色はなんだか南国のよう。運転手の流すイタリアの歌謡曲がみょーにタイポップスみたいで笑える。同じイタリアでもこんなに違うものなんだな。バスの中でアキと到着してから宿までの地図を確認する。辺りはすっかり暗く、窓から見える景色は寂れていて、タイの田舎にいるみたいだと話す。雰囲気的にはかなり悪い。こんな街に夜たどり着いて本当に大丈夫なのだろうか?

くやしいくらいカッコイイゴミ箱

19:00

バスが到着。本当は終点は郵便局前なはずなのに(地球の歩き方情報)、違う場所で降ろされる。娘は寝ていてアキがだっこ。全部の荷物は僕が持ち、かなりの警戒態勢の中とりあえずもっと明るいところへ行ってタクシーを拾おうということになる。ちょっと歩いたところにシラクーサ駅があり、タクシーがいる。話しかけるが英語は通じない。アキが片言のイタリア語(アキは大学の第二外国語でスペイン語を結構真面目にやっていたから、イタリア語もちょっとは話せる)でプリントアウトしてきた地図を片手に説明すると「スィースィー」とおっちゃんは答える。どうやら分かってくれたらしい。とりあえず安心して車に乗るとメーターがない。「もしや、また白タク?」と思って「メーターは?」と聞くと「定額だ」と言っている。どうやら本当らしい。そうして連れて行かれた場所で、「ここからは入れないから後は歩いて行ってくれ」と言われ地図をながら必死で歩く。住所を頼りにようやく見つけた数字の「86」。入口の扉を開けると・・・中は中世の遺跡みたい。もう怖くてちびりそうになりながら、電気を付けながら3階まで昇っていくと

「バチン!」

という音と共に辺りは真っ暗に。

「あぁ、終わった。よく分からないけど、ここで全部終わりだ。」と一瞬思いながらも持っていた携帯電話のモニターの明かりを頼りにもう一度電気を付ける。どうやら一定の時間が経過すると自動で電気が消える仕組みらしい。ようやく3階までたどり着いたのに、またトラブル。今度はなんと

「ドアが開かない」

この木のドア、鍵は入って回るんだけど、どうやっても開かない。がんばって開けようとしているとまた「バチン!」で真っ暗に。ホント、勘弁して。15分近く格闘して、それでもダメだったからAKIさんに電話してみることに。「回しながら押したり引いたりしてみて」とのこと。確かに開きそうな感触はあるんだけど、どうやっても開かないのだ。気づくと娘も起きていて「そんなに(ガンガン)やったらこわれちゃうよ〜」と。そして、旅行前にAKIさんから「シラクーサで困ったことがあったらエノテカ(酒屋)のエンゾというひとを頼ってみてください」と言われていたのを思い出し、持ってきた荷物はドアの前にチェーンロックでくくり付け、一路エンゾのところへ。エンゾが怖い人だったらどうしよう・・。とか思いながらも他に選択肢はない。500mくらい石畳の夜道を歩くとあった!エノテカ「ソラリア」。中に入り「ボナセーラ!エンゾ?」と尋ねると70年代のジーコみたいな人が手を挙げた。笑顔がとても素敵だ。「助かった〜、この人ならなんとかしてくれる」と内心思う。アキが「フィリッポの宿に来たんだけど鍵が開かない。助けてくれないか?」と英語で言うとさっぱり通じない。どうやらイタリア語しかだめらしい。困っているとエノテカの客に英語を話せるイタリア人がいて通訳してくれる。以下エンゾ「分かった。この鍵を持ってもう一回チャレンジしてみろ(と青い別の鍵を渡される)。それでもダメならキミら(アキと娘)はもう一度ここに来なさい。キミ(僕)は荷物の前で待ってなさい」とかなり具体的な指示が飛ぶ。急いで宿に戻り、試して見るがやっぱり開かない。もう、鍵を強く握りすぎていて手の皮がひりひりする。アキと娘だけであの夜道を歩いていかせるのはちょっと危険なので僕も一緒にまたエンゾのところまで行く。店に入ると「あれ?ダメだった?なんでお前も戻ってきたんだ?」と怒られるが、説明できない。「ちょっと待ってなさい!」といって店の奥に入ると「フィリッポ〜!お前のところの客のジャポネが来て鍵が開かないって言ってるぞ〜!」と大声で電話をしている。ベルギーまで国際電話をかけているのだ。こんな状況なのにかなり笑える。エンゾは店に残っていた何人かの客を残して(エンゾは一人で店を切り盛りしている)一人で宿の方へすたすた歩き始める。僕らも負けじと追いかけるがかなり早い。途中僕の方に手を差し出されたので握手し返すと「違う!鍵だよ鍵!」と怒られる。この辺、お互いぜんぜん言葉が通じないのにどうやって会話をしていたんだろうか?そしてもう一度手を差し出されたので今度こそ握手だろうと思って握り返すと「だから違うって!もうひとつ鍵を渡しただろ!それだよそれ!」とまた怒られる。もう笑うしか無い。でもエンゾは真剣そのもの。なんたってこの訳の分からない客のトラブルを解決して、早いところ店に戻らなきゃいけないんだから。エンゾが鍵を差し、前後に「ガクッ、ガクッ」と何回かやると

「開いた!」

どうやら鍵が潮風で錆び付いていて開きにくくなっていたらしい。エンゾは台所から食器用洗剤を持ってきて鍵に刷り込んでいる。「これでとりあえずは大丈夫だから。明日、また油を注しに来てやるよ」と言ってこれまた急ぎ足で行ってしまった。

 

しかし、なんて夜だ。

イタリアは本当に先進国なのか?

 

写真は後から撮影したもの。実際ほぼ真っ暗

86。暗くて探すのが大変だった

気分は探検家。ミイラとか、ピラニアとか。

このドア。死んでも忘れないでしょう。

命の恩人 エンゾ