これを書いているのは2009年の4月12日。

帰国後約半年、店もオープンして4ヶ月が経つ。

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最終日

ミラノから成田、そして水戸へ。ホテルを出発してからほぼ丸一日、24時間の長旅だ。なかなかの苦痛。途中、飛行機で娘がなかなか寝なくて苦労する。成田に着いたら天丼をビールで流し込む。和食っていいな。

いったいこの旅はどんな旅だったのだろう。

ここまで読んでくれた方ならお分かりだろうが、ミラノでもシチリアでも僕らは暇さえあればBAR(バール)に入り、カフェ(エスプレッソ)を飲んで歩いた。バリスタの動き、バンコのものの配置、飲み物、食べ物、お客さんの流れ等、出来るだけ詳細に記憶し、自分の店のイメージを膨らましていった。

不安だったのだ。

ここ数年のスペインバルブームで一気に定着した感のある立ち飲み。でもそれは東京での話。果たして本当に水戸で「イタリアンバール」が成立するのか?エスプレッソの立ち飲みをする人がいるのか?

エスプレッソといえば未だに→少なくて苦い=不味いのイメージ。でもエスプレッソに罪はない。不味いエスプレッソに罪があるのだ。そして美味しいエスプレッソを知る人は少なく、出会える場所にいたってはほとんどないのが現状。

では、実際はどうだったか?

本物を知る人は少数だがいた。
そんな人たちに支えられて(というか絶滅寸前の朱鷺〈トキ〉を守れ!くらいの勢いで)なんとかここまでやってきている。とある常連さんはオープン前に店の前で配ったblackbird newsの店内図面に「立ち飲み」の文字を発見して大興奮、手帳のカレンダーのオープン日に印をつけてまだかまだかと待ってくれていたそうだ。そして未だに応援や励ましのメールがたくさん届く。

バールという素敵な文化を僕らは水戸に定着させたい。
コーヒーはコンビニや自動販売機で買い、買い物もほとんどネットで事足りる。誰とも会話しなくても生活できてしまうけど果たして本当にそれでいいのか?人と人との関係がどんどん希薄になっている現代にこそ、バールとバンコは有効な役割を果たすはずだ。

「朝から夜までオープン。クイックもスローもある。サプライズもある。日本の地域に心地よいバール、日本人の『止まり木』になること」

(横山千尋著「ITALIA BAR」表紙より抜粋)

blackbirdのマークにある鳥かごの中には鳥がいない。自由に出たり入ったりできる止まり木としての鳥かごをイメージしたためだ。これからもたくさんのblackbirdsの止まり木となるべく、一杯のエスプレッソ、一皿のパスタに思いを込めていこうと思う。

 

10日間のイタリア旅行。親子3人でかかった費用は約70万。

安いか高いかは言うまでもない。

僕らが得たものは計り知れないのだから。

9日目

8:00

今日でシラクーサを離れ、ミラノへ。

朝、またメルカートで生ハムのパニーノを買ってきて(一度ハマると何度でも食べたがる僕)白ぶどうとbarでテイクアウトしたカプチーノで朝食。

アキはゲストノートに想いを綴っている。本当にほんの何日かだけど、思い入れの固まりみたいな部屋。

9:00

Akiさんから電話。「収穫したブドウを絞りにシラクーサの近くまで来ていて11時頃そっちに寄れそうだから」とのこと。僕 らのミスでソリッキャータまでたどり着けなかったのに、そのことを凄く気に病んでくれていて申し訳ない。でもフランクに会える最後の機会。凄くうれしい。

11:00

宿の近くのBarでAkiさん達と再会。お土産にフランクの作ったワイン「Rosso di Contadino」をいただく。フランクは、イタリア語/フランス語/英語/ベルギー語(母国語)/ドイツ語を理解し、ワイン業界では「自然派ワインの奇才」と呼ばれているらしい。でも本人は至って物静かで雰囲気のある人。僕もつたない英語で他愛のないことを話す。フランクが以前大阪に住んでいて、某アウトドアショップで働いていたこと。カヤックが大好きでよく四国に遊びに行っていたこと。シチリアの交通事情の悪さ。彼の英語はとても流暢で分かりやすかったにもかかわらず、僕は相づちをうつくらいしか出来ない(かろうじて意味は通じた)。もう少し、気の効いたことが言えなくてもせめてもう一言言葉が出てきたらよかったのになぁ。ワインの蘊蓄はわからないにしてもせめてもう少し質問出来たらよかったのになぁとつくづく思う。でも会えて良かった。フランクとAkiさんの手は今さっき潰してきたであろうブドウの汁で紅く染まっていた。いつかエトナ山を訪れよう。

12:00

エンゾに鍵を渡しに行く。エンゾはものすごく寂しがってくれて、「また是非来いよ」と言ってくれる。エンゾがいるならまたシラクーサに来てもいいな。ドアもずいぶん上手に開けられるようになったし。

13:00

無事、バスに乗れる。この国ではバスに乗ることすらままならないのだ。流れる景色が感傷を誘う。本当にいろいろなことがあった。きっと僕の今後の人生にこれ以上無い影響を及ぼしてくれるんだろう。

14:00

カターニア空港に無事到着。格安航空券のeasyjetで一路ミラノへ。飛行機から見たエトナ山はとても大きく、フランクとAkiさんがあの麓の厳しい自然の中ワインを作っていると思うとなんとも言えない気分になる。そしてちょうど見えた夕焼けがあまりにもきれいで、アキは写真を何枚も何枚も撮っていた。

17:00

ミラノ、マルペンサ国際空港に到着するとあまりの寒さにびっくりする。そりゃそうか、沖縄から北海道に来たようなものだ。雨が降っていてよけいに寒い。プルマン(高速バス)でミラノ市街地へ。

18:00

ミラノ中央駅到着。より激しく雨が降っていて寒いし荷物は重いし、娘は寝てるし最悪。バスの中でアキがフィンランド人の紳士と英語で話をしている。紳士はミラノに住む娘に会いにきたらしい。馬鹿みたいな言い方だけど、旅っていいなと思う。お互いに単なる暇つぶしかもしれないけど、横に座ったたった何分かを共有する。その後連絡先を交換したりもしないのも分かってるけど、「Have a nice trip! Good luck!」と言い合う。それだけだけど、なんかいい。

19:30

初日と同じホテルにチェックインして、初日に食べに行ったピッツェエリアに行くが満席。しかも45分待ちだそう。やっぱり美味しいところはどこでも流行るのだ。仕方ないから適当に歩いて近くにあったピッツェリアに入る。なんと言うかテキトーな感じ。

22:00

移動に疲れて寝る。


8日目

7:00

明日の午後には飛行機でミラノに出発だから、実質シチリア滞在最終日。

朝、早起きしたアキがメルカート(市場)で買って来たパニーノが絶品!「魚屋の兄ちゃんが食べてたのが凄いおいしそうで、『それどこで買えるの?』って聞いたら腕引っ張って連れってってくれたんだよ。しかもその場で塊から生ハムスライスして、バゲットガリガリ切った中に入れてくれたの!」とやや興奮気味に話す。「パンに関しては圧倒的に日本の方が美味い」と感じていた僕だが、このパンはパリッとしていてなかなかのもの。生ハムは超薄切りが5枚も入っていて、香りも口当たりも文句無し!これで¥250くらい。いい国だなぁ、イタリアって。生ハムって本当に美味いなぁ。

blackbirdは「魚介と野菜だけ」でやろうと思っていたけど、そこに固執しなくてもいいかもしれない。美味い生ハムが探せたら塊で仕入れて、こんな風に目の前でスライスして出せたらいいな。ベーコンもパンチェッタも自家製で美味いのが作れたらそこから始めてみよう。幸い茨城にはいい豚がいっぱいいるし。

10:00

アルキメデ広場(P.zza Archimede)からバスに乗ってシラクーサ駅付近のバス乗り場まで行く。この前の反省を踏まえて、明日の空港行きのバスに確実に乗るために時刻表をチェックする。出発前からガイドブック等で「バスや列車は旅行者には優しくない」という情報は得ていたが、本当にそうだ。しかも明日は飛行機で、乗り遅れたらそれで終わり。この前みたいにシラクーサに戻ってくるわけにはいかないのだ。

11:00

またバスに乗って考古学公園(7日目地図の左上辺り)まで行く。ずいぶんバスにも乗れるようになってきた。少しずつだけど、成長しているのだ。僕も簡単な挨拶や、買い物の文句なんか言えるようになってきたし。それにしても凄く暑いく、半袖でもいいくらい。

バスを降りると八百屋があり、美味そうなフルーツが並んでいる。どれもつやつやしていて美味そう。特にトマト!

11:30

考古学公園に到着。ギリシャ時代の劇場らしいが、本当にきれい。天気も良く、ちょっと海から離れているから空気も乾いていて気持ちがいい。この劇場で今でも年に何回か古代劇やロックコンサート(!?)が行われているらしい。ちょっとフジロックのグリーンステージを思い出す。

13:30

腹が減っていたが、なかなか昼飯にありつけない。このままだとランチタイムが終わってしまう・・・。もしそうなったらこの国ではまともなご飯は夕食までお預けになることになる。あきらめかけた時に「Trattoria」の看板が!入口の横に女の人が座っていて、「まだ大丈夫?」と聞くとすんなり入れてくれる。20席程度の店内には女性のおまわりさんが1人。絵に描いたような「Trattoria」の雰囲気にちょっと興奮する。こういうところにも来たかったんだ。

ビールとアンティパストミスト、パスタポモドーロとパスタシラクザーナを注文する。ビールは良く冷えていて実に美味い。アンティパストも予想通り(笑)皿からはみ出している。でも美味い。びっくりしたのはパスタ。なんと茹でてオイルを絡めた麺の上に温めたソースをかけただけの「喫茶店スタイル」。今でもこういう店がまれにあるというのは聞いていたけど、本当にあるんだ。パスタポモドーロはその名の通りどこまでも「トマト!」な味。一緒に出てきたチーズはパルミジャーノほどコクがなく意外とあっさりしていて実によく合う。うまいなぁ、これ。パスタシラクザーナはペースト状にしたドライトマトとアンチョビのソースにフレッシュのペパーミントが入ったこれまでに食べたことの無いもの。でもこれも美味かった!トッピングのパン粉がまたいいアクセントになって、素朴なんだけど深い味。

食べはじめる頃には店内はすっかり満席に近い状態に。近所のおじちゃんのグループが何組かと、老夫婦。雰囲気も凄く良くてたまたま入ったけどラッキーだったな。

16:00

そのまま歩いてオルティージャへ戻ることに。結構距離はあるけど、歩くと結構面白いことがあるものだ。明後日の万聖節に合わせて、島は今日から5日間お祭りらしい。夕暮れ時になって街が電飾に彩られていく。僕らが行ったのは18:00前で、まだ人も全然出てなかったから一通りみて一度宿に帰る。今日もずいぶん歩いて、足が痛い。

19:30

昨日のお昼に入れなかったオステリア ダ マリアーノへ。上手い具合にテラスが空いている。やっぱりテラスは気を使わなくていいからラク。とりあえずハウスワインの白を注文。軽く飲みやすい、いかにもシチリアらしいワイン。飲んでると注文してないのに勝手にコースが始まっている。もう今日は流れに任せよう。オステリアだし、目ん玉飛び出るくらい高くはつかないだろう。

1品目「自家製リコッタチーズとガーリックトースト」ふんわり生暖かいリコッタは自家製で、トッピングの砕いたピスタチオがいいアクセントに。あっさりとしているがコクがあり凄くバランスがいい。

2品目は前菜の盛り合わせ。シチリアに来たら絶対食べたいと思っていた「カポナータ(野菜のトマト煮込み)」がある!うまい。他も凄くあっさりしているけど、それぞれの素材のおいしさがくっきりわかるように調理されている感じ。

3品目はパスタ。最初に娘に「トマトソースのペンネ」を持ってきてくれる。特別注文しなくてもこういうことが出来るっていいな。そしてこのトマトソースが絶品。茹で上げたペンネに絡めただけだろうけど、その分シンプルでトマトのおいしさが凝縮されている感じ。

僕のところにはパスタシラクーサ。ペースト状にしたドライトマトのソースに香ばしく焼き上げたパン粉を上からかけたもの。昼のトラットリアでも食べたけど、シンプルでとても美味しい。

アキのところには「リコッタチーズとバジリコのペンネ」。煮詰めた生クリームに湯で上げたペンネ、リコッタチーズ、バジリコのペースト、パルミジャーノ(かそれと同等のコクをもつチーズ)を入れて一気に仕上げたもの(たぶん)。トッピングの細かくないパン粉と砕いたナッツがほどよい食感でとても美味しい。

今までならセコンド(メイン料理)はパスしてきたが、今日は調子もいいし、なにより凄くおいしいからシェアで「スズキのグリル」を注文。これも大当たり。塩、レモン、イタリアンパセリだけで食べるどうしようもなくシンプルな料理だけど、身はふっくらとして柔らかく塩加減も絶妙。イメージ通りの「これぞイタリア料理!」という1皿。

最後に胡麻のおせんべいみたいなものとショウガの砂糖漬け、マルサラ酒が登場。どれも体に良さそうで、マルサラは養命酒のような味で、一気飲み。

最後の最後で当たりのレストランに行けたことで大満足。いい余韻のまま旅の終わりを迎えられそう。

7日目

シラクーサの地図。クリックすると拡大されます。

7:00

起きると体全体が痛い。でも気分はすっきりしている。昨日のハンバーガー屋で食べきれなくて持ち帰ってきたポテトとオリーブでスープを作る。不思議と悪くない味。食事の後、溜め込んでいた洗濯をし持ってきた麻ひもで吊るす。

 

10:00

オルティージャ島で行ってないところに行こうということになり、島の東側に向かって歩くと、学生や普通に島で生活している人たちがたくさんいる。学生はみんなきれいな格好をしていて、好感が持てる。地図を片手にフラフラ歩いていると保育園らしき建物がある。アキと娘が中をのぞくと、外で遊んでいた先生と子供達が近づいてきた。どうやらみんな黄色人種の子供が珍しいらしく、娘に何か話しかけてくる。娘に「みんなと一緒に遊んでおいで」といって促すが、恥ずかしがって固まっている。アキが「写真をとってもいい?」と聞くと、待ってましたとばかりにみんな寄って来る。建物の中にいた人まで呼んで(笑)全員で記念撮影。「ここに住所を書くから、絶対送ってよ!」と言われる。ここの人は子供も大人も素朴でいいな。

 

11:00

歩き疲れたからバールで休憩。日本の自動販売機くらいの頻度でバールがあるが、それはここが観光地だからというわけではないらしく、イタリア中にこういった個人経営の店があるらしい。缶コーヒーの代わりに人がいれたエスプレッソを飲む。エスプレッソは大体どこも1ユーロ(¥130くらい)以下の手軽さ。なんていい習慣なんだろう。

12:00

Akiさん達に会えなくなってしまったので、6日分の宿代と鍵をエノテカのエンゾに渡すことに。エンゾの所に行ってその旨説明するが、英語が通じないためたったそれだけのことを説明するにも一苦労。エンゾは娘のことを気に入ってくれたらしく「チャーオ!バンビーナ!チャーオ!」と写真がブレるくらいの笑顔。普段はほとんど初めての人に懐かない娘もエンゾのテンションに押され、拾われてきた猫みたいな声で「ちゃーお」と返事をしている。なかなか微笑ましい光景。

 

12:30

地球の歩き方に載っていた「ダ・マリアーノ」というレストランでランチをしようと目論むが、どうやら定休日らしくやっていない。残念。途中歩いていると、南国にあるようなきれいな花が咲いていた。日中は長袖のTシャツ1枚で大丈夫だから、シチリアはやっぱり暖かい土地なんだな。歩いていたらまたおじいちゃんに声をかけられる。歩いていても、バスに乗っていても、買い物をしていても「チャーオ!バンビーナ!」だ。娘が照れているのもいじらしくていいのか?

13:00

結局、エンゾの店の前のオープンテラスの気持ちのいいピッツェリアでランチをすることに。野菜のグリル、マルゲリータ、生ハム・アンチョビ・モッツァレラの包みピッツァの3品にビール。野菜はナスとズッキーニとアンディーヴで、味は塩とオリーブオイル。シンプルだけど、グリルされてちょっとスモーキーな野菜はおいしい。マルゲリータも旨かったけど、なぜかバジリコが乗ってなかった。忘れたのか?包みピッツァは生ハムとアンチョビがしょっぱい!ビール飲んでなかったら食えなかっただろうな。最後はカフェ。総合点はまずまずかな。そして、店はかなり暇そうで、ぼーっとしてる店員のやる気の無い姿をカシャリ。昼寝したいんだろうか?自分たちも眠くなったので、娘の昼寝も兼ねて一度宿に戻ることに。


16:00

また外出。今度はオルティージャ島の入口の方に歩いて行ってみる。途中にもの凄く素敵なファサードのリモンチェッロ屋を見つけるが、午後休み中でやっていない。残念。

島の入口付近にあるジューススタンドで休憩。娘は「スッコ・ディ・ペスカ(桃ネクターのようなもの)」。僕とアキは炭酸にレモン果汁を搾っただけの素朴な飲み物。店員のスミ入ってレザボアドッグスにでも出てきそうなお兄さんが素敵な動きで作ってくれる。さすがイタリア男。何かが違う。

19:00

地元の人も通うと評判のシーフードが有名なレストランでディナー。ここは最初から行ってみたいと思っていたけど、ちょっと敷居が高そうでためらっていた店。でもせっかくシチリアまで来たんだと、勇気を出して入ってみる。僕らが2組目の客で、最初の客も夫婦と子供連れなのに少しだけ安心する。カメリエーレもバリッと蝶ネクタイをしていて、動きも優雅。白のハーフボトルを注文したら、この旅で初めてテイスティングを促される。作りおきのアンティパストは取った分だけ加算される仕組みで、豊富な種類に心引かれたが、ぐっと我慢して「インサラータ・ディ・マーレ(魚介のマリネサラダ)」を注文する。今まで食べた中では一番おいしかったが、やっぱりエビがブヨブヨしている。「ブヨブヨじゃなくブリブリしていて欲しいのに!」と思ったが、ひとつ重要なことに気がついた。他の魚介もどこか食感に締まりがないのだ。そしてそれはきっと海流のせいだろう。地中海の温暖で穏やかな波では、僕好みの「身がしまっていて脂が乗った魚」が育ちにくい。それはいいとかいけないとかじゃなく、「そういうもの」なんだ。北海道の魚介と沖縄の魚介が全然違うのと一緒だ。そんな単純なことに気づくのに、ずいぶん時間がかかっちゃったなぁ。でも気づけたのは大きな収穫だった。よくイタリアンとは「地方料理の集合体」だと言われる。その土地で取れたものを塩、オリーブオイル、レモン(または酢)で食べるシンプルな料理。だとすれば、日本のイタリアンがおいしく感じるのは「日本人向けにアレンジされているから」じゃなくて「食べ慣れた日本の食材で作っているから」が正解なんじゃないかな。もちろん例外はあるだろうし、イタリアで食べるものは(当たり前だけど)どれもレベルが高い。それでも結構食べてるのにホームランが出ないのはその辺に理由があるように思える。僕が立てた仮説は本当に正しいのかな。帰るまでに答えが出るのかな。

パスタはウニのペペロンチーノと、魚介とプチトマトのパスタ。ウニの方は期待はずれ。ウニの量が少なくて、味がぼんやりしちゃってる。魚介の方は、カニ・ムール貝・アサリ・マテ貝・エビがたっぷり入ってアルミを外すと磯の香りが「ふわっ」とする演出も見事。うん、旨い!店の奥にはショーケースがあり、大小さまざまな魚介が並んでいる。隣の秤でグラムを計って調理法を決める仕組みなのだろうな。注文したかったけど、日本人の僕らの小さな胃袋じゃ残念だけどもう限界。でもおいしかった。

21:00

気分がよかったからまたエンゾの店で1杯やろうということになる。店は混んでいて、客が自由に外に椅子を持ち出したりしてだらだらやっている(イタリアは法律で公共の場での室内の喫煙が禁止されているからってのもあるようだけど)。エンゾも適当に飲みながら楽しそうに働いている。BGMも50年代くらいのJAZZが流れていて、それがまたいい。調度品とか、装飾とかは実にあっさりしているのだけど、こんなに居心地がいいのはエンゾの人柄なんだろうな。

店の奥にあったワインの樽を撮影させてもらう。イタリア語が出来たらワインや音楽の話がしたかったな。

いろいろあって、シラクーサに戻ってきちゃったけど、エンゾにまた会えたからいっか。

6日目

7:00

どうやら大丈夫だったようだ。寝過ぎで腰が痛かったけど、熱が上がらなかったのは不幸中の幸いと言えるだろう。今日一日なんとかやれそうだ。朝食はアキが買ってきてくれたカプチーノとブリオッシュ。それから昨日僕が寝ている間に買ってきたカンノーリという甘くしたリコッタチーズのスイーツ。なんと1個1000キロカロリーもあるという恐るべき食べ物だが、実際に食べて見るとそんなに重くない。リコッタチーズがふんわりしてとてもおいしい。

レンタカーの予約は11時だから早めにパッキングして、空いた時間でドゥオーモを見に行こうということになる。

9:30

とりあえず、いつも通り市場へ。市場にはこの島の人々の暮らしが本当に良く表れている。この時期のこの地方でなにが収穫できるのか?イタリアに行こうと決めた時、迷わずシチリアに決めたのは、海に囲まれ豊富な魚介を使った料理がblackbirdの方向性とぴったりだったからだ。もう少し時間があったらこの食材を使って料理をしたかったが、今回は見て食べることに専念することに。それだけでも本当に勉強になる。

10:30

ドゥオーモ(大聖堂)に到着。ミラノのドゥオーモよりずっとこじんまりしていたが、親しみの持てるとても素敵な作り。天井が高く、ステンドグラスから漏れる光がすごくきれいでしばらく眺める。ただ積んであるだけの椅子でさえかっこよく思える。宗教的なことは分からないけど、この建物には人の心を動かす何かがやっぱりあるように思えた。そしてそれは極東から来た異人種の僕が見てもはっきりと感じられるほど強いものだった。

11:30

予定より少し遅れて宿を出発。目的地であるエトナ山の麓、ソリッキャータまでは車で3時間の道のり。果たして運転できるんだろうか?無事にたどりつけるのだろうか?

レンタカーオフィスまであと200m、アキのこの一言が僕たちの旅を大きく変えることになる。

「国際免許、持ってるよね?」

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2008/10/21 20:00 Mito(Tokyo)

※出発の前日。パッキング中。

「大切な資料は全部あたしが持っていくから、ケンくんはパスポートだけもっててね。分かってると思うけど、絶対無くさないでね。それと、出発前にもう一回指差し確認しなきゃね。まぁ、パスポートとクレジットカードさえあればなんとかなるんだけどね・・・」

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僕「えっ?だって預けてたじゃん。俺パスポートしかもらってないよ」

アキ「えっ?そうなの?あたし・・・、だめだ、ぜんぜん記憶がない。日本を出てからバッグの中で国際免許見てないもん」

僕「とりあえず、AVIS(レンタカー屋)行って、バッグの中もう一度見てみようよ」

※AVISのオフィスの中。以下、全部英語でのやりとり。

アキ「予約した沼田です」

受付「お待ちしておりました」

アキ「それが、国際免許を日本に忘れてきた可能性があるので一度バッグの中を調べてもいいですか?」

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僕「だめだ、やっぱりないよ」

アキ「どうしよう!あたしのせいだ。大失態じゃん!」

僕「とにかく、まだお昼だし、ソリッキャータにたどり着くための方法を考えようよ」

アキ「・・・、ごめん。そうだね。なんとかするしかないもんね」

僕「僕が娘と荷物を見てるから、バスの時間を調べて来なよ。カターニアまで1時間ってことは乗り継ぎ考えても十分間に合うはず。とりあえずAkiさんに電話して事情を話そう。いい案が出てくるかもしれない。」

12:40 Siracusa

※海辺のベンチ。娘と2人でアキの帰りを待つ。

娘「ママ、遅いねぇ」

僕「うん、でもそのうち来るよ」

 

13:00

アキ「14:40のカターニア行きに乗れば、カターニアから17:30発のソリッキャータ行きに乗れるはず」

ここまできたら焦ってもしょうがない。時間までバールでお昼を食べることに。ターボラカルダ(出来合いのお惣菜)は嫌だったが、そんなに時間があるわけでもないし、なにしろ荷物が重いから、マレーナ門近くのBARでツーリストセットを食べる。前菜盛り合わせ、サラダ、パスタかピッツァ、カフェで9ユーロ。前菜は、まあまあ。パスタ、ピッツァは問題外。食えなくはないけど、これならパニーノ食ってた方がまし。そういえばシラクーサでは美味いパニーノ屋に出会わなかったな。ミラノのパニーノが懐かしい。英語が通じるミラノが懐かしい。

14:00

プルマン(長距離バス)乗り場まで市内を走る無料バスで行く。たったそれだけのことなのに「言葉が通じないとどれだけ苦労するか」を思い知る。僕よりずっと英語もイタリア語も理解するアキが奔走し、どうにか乗り場までたどり着く。

14:50

カターニア行きのバスが出発する。なんとか第一関門は突破したようだ。バスからの荒涼とした景色がちょっと不安を募らせる。

 

15:45

カターニアの中央駅でバスを降りる。降りたバス停はバス乗り場でもあり、シチリア各地に向かうバスでごった返している。さて、どこのどのバスに乗ればいいのか?最初は荷物を抱えたままいろいろな人に聞いて回っていたが、どうにもらちがあかない。またしても、安全そうな場所で僕と娘は待機し、アキが調べてくることに。

17:10
娘「ママ、遅いねぇ」
僕「そうだね、遅いね。でも大丈夫だよ。すぐ戻ってくるよ」
17:20
※バスの発車予定時間まであと10分。
アキ「ダメ。全然分からない。誰に聞いても違う答えばかり。バスの切符売り場、運転手ですら全く違うことを言ってくる。どうしよう・・・。Akiさんに電話して、バス会社の時刻表を今調べてもらってるんだけど、それでも間に合わないかもしれない。ちょっと、もう一度見てくる」
17:30
辺りはだんだん暗くなりはじめる。それと同時にいろいろな不安が現実になり始めていることに気づく。この時点で僕たちに残された選択肢は二つ。
1)バスに無事乗れて、AkiさんとFrankのいるソリッキャータにたどり着く。
2)バスを諦めて、カターニアでホテルを探す。
どっちにしても早く動かないと日が暮れてしまう。シチリア第2の都市、カターニアは海沿いの大都市で治安が悪いことでも名を馳せている。実際、バスの中から見た市街地はとても夜ホテルを探し歩くような場所には見えなかった。しかも僕らは言葉が分からない上に、子連れの旅行者。被害にあう可能性は小さくないと判断するのが懸命だろう。
娘「ねぇ、だっだ(僕のこと)」
僕「なに?」
娘「げんきがでるようにおうたうたって」
僕「いいよ〜。なにがいい」
娘「えっとねぇ、アンパンマン!」

♪そうだ うれしいんだ 生きる よろこび
 たとえ 胸の傷がいたんでも

 なんのために 生まれて なにをして 生きるのか
 こたえられない なんて そんなのは いやだ!

 今を生きる ことで 熱い こころ 燃える
 だから 君は いくんだ ほほえんで

 そうだ うれしいんだ 生きる よろこび
 たとえ 胸の傷がいたんでも
 ああ アンパンマン やさしい 君は
 いけ! みんなの夢 まもるため

 なにが君の しあわせ なにをして よろこぶ
 わからないまま おわる そんなのは いやだ!

 忘れないで 夢を こぼさないで 涙
 だから 君は とぶんだ どこまでも

 そうだ おそれないで みんなのために
 愛と 勇気だけが ともだちさ
 ああ アンパンマン やさしい 君は
 いけ! みんなの夢 まもるため

街全体が排気ガスに覆われたようなカターニア海辺のバス停で、沈んでいく夕日を見ながらアンパンマンを歌う親子。

「なんのために生まれて なにをして生きるのか

 こたえられない なんて そんなのは いやだ!」

自分とは対極の下世話で下らない子供だましの歌だと思っていたアンパンマン。極限状態にあるとはいえ自分が歌うアンパンマンに涙するとは。でもそうなのだ。こたえられないなんて、そんなのはいやだからわざわざイタリアまで来たのだ。わからないままおわる そんなのは いやなのだ!

娘は涙を流している自分の父親をみてどう思っただろう?

勤めていた会社を退職し、田舎にUターンし、多額の借金をして、流行るかどうか全く分からない食堂をやろうとしている不安。旅行の最大の目的である「フランクのワイン作りを手伝う」ことがかなわぬ夢に終わってしまうと思うと急によく分からない固まりのようなものが体の中からこみ上げてきたのだ。

18:00

感傷的になってばかりもいられない。今目の前にある危機を回避しなければ先にも後にも進めないのだ。いろいろと調べてくれていたAkiさんから電話がある。

Aki「ソリッキャータまでのバスは終わってしまっていて、その手前のリングアグロッサという街に着来てもらえれば迎えにいけると思う。」

アキ「カターニアでホテルを探して、明日そっちに向けて出発しようと思うんですが・・・」

Aki「でもカターニアは暗くなってから歩かない方がいいと思うよ」

18:10

辺りは既に真っ暗だ。Akiさんから電話がある

「今日は迎えにいけるけど、みんなが帰る日がちょうどブドウの収穫日で車で送っていけなくなりそう。手は尽くしてみるけど・・・」

うん、もう十分だろう。

僕「シラクーサへ戻ろう。あの部屋なら後何日かは泊まれるはずだから。」

アキ「・・・。そうしよう」

19:30

シラクーサ行きのバスに乗る。娘はアキの腕の中ですっかり寝ている。

アキ「もっと怒ったりしていいんだよ」

僕「・・・」

それでもどうしてもアキを責める気にはならなかった。この旅のほとんど全ての予定を立て、格安航空券の購入方法の本を買って勉強し、ネットのレヴューを見て英語で直接ホテルを予約し、ありとあらゆることをしてくれたのはアキなのだ。甘えて、頼ってしまっていたのは僕の方だ。

イタリア旅行もちょうど半分が終わろうとしているこの時、本当においしいと思えるものにありつけていないことで、僕はどこか焦っていた。そしてそれを「娘がいるからしかたない」のだと思うようにしていた。妻と2人なら行動の範囲はぐっと広がり、行きたいところへ行き、食べたいところで食べることができる。子連れでの外食は「グラスを倒して割ってしまったりはしないだろうか」「騒いで他の客に迷惑をかけたりしないだろうか」という不安が常につきまとう。東京でもそうだったのだから、外国ならなおのことだ。でもそれは最初から分かっていた。それを覚悟で連れてきたのは僕たちなのだ。シラクーサでまだやれることはある。きっとあるはずだ。

21:00

シラクーサに到着。空腹が極限に達していたので、途中のハンバーガー屋で遅めの夕食。フレンチフライをキンキンに冷えたビールで流し込むと、抱えていた不安と緊張が一気にほぐれていくのがわかる。
さて、明日はなにをしよう。
また市場に行こうかな。

5日目

6:30

自然に目覚める。ゆうべ結構飲んだのに全然残っていない。楽しい酒は残らないってのは本当なのかな。2人が起き出してくる前に一人で海まで散歩に行く。朝日を浴びた地中海はとてもきれいで、ひんやりとした空気と共に体を洗い流してくれるような気分になる。途中のBARに旨そうなパンがあったからカプチーノ2杯と桃ジュースと一緒にテイクアウトする。

7:30

朝食。昨日食べきれず持ち帰ってきたソーセージ、メルカート(市場)で買ったブドウ、オリーブ、パン、カプチーノ。ソーセージを薄くスライスしてパンに挟むととてもおいしい。おいしいものは冷めてもおいしいのだ。なかなかの朝食に満足する。

10:00

これと言って予定が無かったからまた市場へ行くが、今日は日曜日で休み。そのまま海沿いを歩いて昨日ジェラートがおいしかったBARで休憩することに。娘はまたイチゴ、アキはピスタチオとアマレーナ(チェリー)。僕はちょっと寒かったからカプチーノ。ここのカプチーノはなかなか美味い。サービスのお姉さんはイタリア語の他に英語とフランス語を流暢に話していた。ミラノでは気づかなかったが、シチリアではほとんど英語が通じない。ホテルなんかに行けばもしかしたら通じるのかもしれないが。

そろそろ行こうかという時にぱらぱら雨が降ってくる。すぐ止むだろうと思っていたけど、一向に止みそうにない。しばらくすると雨は土砂降りになりその場で足止めを食らっていた客が全員店内に避難。う〜ん、それにしても寒い。風邪引かないようにしないと。

11:30

雨が一段落したので一度宿に戻ることに。途中細道から見えたトラットリアがとってもいい雰囲気。

12:00

宿に帰ると急に寒気が。「あぁ、やっちゃったかも」と思ってももう遅い。娘用に持ってきた体温計で熱を計るが平熱。でも寒さが引かないためそのまま横になることに。アキが近くの総菜屋で買ってきてくれたパスタを無理矢理口に入れて、持ってきた風邪薬を飲む。疲れが出たのかもしれない。明日は車の運転をしなければならないから何としても今日中に治さなければ。そのまま夜まで寝る。

23:00

目が覚めると、2人とも寝ている。アキが昼の総菜の残りと部屋にあったカッペリーニで作ってくれたスープパスタを温めて食べる。結構いける。

一日無駄にしたような気がしたが、体があっての旅行。薬を飲んで、無理矢理朝まで寝る。

4日目

430

夜中、娘がうなされている声で目が覚める。ゆうべのことを夢に見ているのだろうか?トイレに行きたかったが、真っ暗で何も見えないため諦める。いつの間にかまた眠りにつく。

 630

再び目が覚める。横になりながらゆうべの顛末を思い出し、笑う。なんだったんだろう、あれは。

 700

起きてきた娘が「きのう夢にワニが出てきた」と騒いでいる。「暗いところにワニが出てきて怖かった」と。うなされていたときだ。何かのトラウマにならなければいいけど。

 800

腹が減ったのでとりあえずBARを探して外に出る。アルキメデ広場に行くと2件バールがあり、近い方に入る。カプチーノとターボラカルダ(作り置き)ピザを注文。う〜ん、イタリアだろうがなんだろうが、まずいものはまずい。失敗。

近所のスーパーに寄って水を買って一度宿に帰る。

宿は、いわゆるB&Bという部類なのだが、ブレックファーストは付いてないので自分たちでなんとかするしかない。広さはダイニング5畳、キッチン5畳、キングサイズのベットがあるメインの寝室8畳、シングルベットが2つある予備の寝室5畳、バストイレ。床は全部石造りで(大理石?)古い調度品があって凄く素敵。キッチンも4口のコンロとオーブンまで付いてるから、かなりしっかりした料理ができる。20人くらいのホームパーティーが出来そうなそんな部屋。 

1100

とりあえず島を歩こうということになる。僕らが滞在していたのはシラクーサの中でも観光地であるオルティージャ島。島といっても半島で、太い2本の橋でつながっている。昼間は夜のあの怖い雰囲気とは違って観光客も多く、歩きやすい。観光客の大半は退職したと思われる白人夫婦(結局この島であった日本人は4人だけだった)。とにかく島全体が遺跡か映画のセットのような雰囲気。10分ほど歩くと、遠くにパラソルが連なった場所を発見。ひょっとして・・・、やっぱり市場だ!若干興奮して中に入ると、狭い路地に野菜、フルーツ、魚、チーズ、肉、パン、日用品など地元の人の生活に必要なものがほとんど揃いそうな品揃え。そう、こういうのが見たかったのだ。このためにわざわざイタリアまで来たのだ。やっぱりトマトは2種類。小ぶりでまん丸なものと、縦長でナスのような形をしたもの。どっちも発色が良く、つやつやして旨そう。なすは日本でいう米なすくらいの大きさ。見た目から想像するに、ちょっと大味な感じだが、実際に食べたらどうなのだろう?ズッキーニ、ピーマン、カリフラワー、ブロッコリー、インゲン豆、ウズラ豆、サニーレタス、にんにく、タマネギ、人参、フェンネル等々。不思議なのは「これなんだろ?」という野菜がほとんどないこと。もしかしたら、その辺に日本でここまでイタリア料理が浸透した理由があるのかもしれないな。そして、市場に並んでいる野菜はどれも野性的で力強さにあふれていた。うれしくなって写真を撮りまくっていたら「買わないんだったらあっちいけ!」「写真とっただろ!このドライトマト買っていけ!」と怒られる。でもたのしいから気にしない。

そして魚屋もまた、すごい種類の魚介を並べて威勢のいい声を張り上げている。アサリ/ムール貝/マテ貝/ハマグリ/エビ/スカンピ/イカ/タコ/シャコ/サメ/カジキマグロ/スズキ/黒鯛/白魚/太刀魚/真イワシ/カタクチイワシ等々。この近郊で水揚げされるありとあらゆる魚が並んでいる。地元のレストランらしき人も大量に買いに来ている。そりゃこれだけ安けりゃ買いにくるわな。

肉はなぜか加工品のみ。とんでもなくでかいモルタデッラ(ハム)、サラミ、生ハムをその場でスライスして量り売り。こっちの人はそういう手間を惜しまないんだな。なんというか極端にグルメとかじゃなく、日常的においしいものを食べるということに対して貪欲な気がする。チーズも普通に20種類くらい固まりで売っていて、どれも旨そう。

途中、しわくちゃのおじいちゃんが寄ってきて「チャーオ、バンビーナ!キレイヤ、キレイヤ」となぜか関西弁で娘のほっぺたを突っついている。なんか笑える。

ブドウを一房買って近くの広場で食べる。皮ごと食べられるブドウは味が凝縮していてとっても旨い。他にオリーブのマリネも買う。

13:00

海辺のダルセーナというリストランテでランチ。ハウスワインの白をハーフボトルと前菜の盛り合わせ、ボンゴレビアンコ、カジキマグロとズッキーニの生パスタを注文する。ワインはとてもすっきりしていて飲みやすく、前菜と一緒にぐいぐい進む。前菜は魚介のフリット、マリネ、カジキマグロのビネガーマリネ。どれもおいしいけど、マリネのエビがちょっとブヨブヨしてる。もっとプリプリのを想像していただけに残念。ボンゴレも悪くないけどちょっと油っぽいなぁ。でもカジキとズッキーニのパスタは美味!上にかかっているパン粉がいいアクセントになって、もちもちの食感のパスタもおいしい。全体としてはやっぱり場所がいいだけに観光客相手のリストランテなのかなという印象。これで45ユーロ。結構いい商売だ。料理の点数が低かったからデザートとカフェはパス。他を探すことにする。

15:00

海辺をぐるっと回ってマレーナ門の側にジェラートがおいしいカフェがあるらしいので行ってみる。

席の大半はテラスで、目の前が海というなかなかのロケーション。娘がイチゴ、アキと僕でピスタチオとヘーゼルナッツ。これがすんごい旨かった!それぞれの素材の味がしっかりしてるから、ひょっとしたら自家製かな。ジェラテリアはどこも自分のところで作っているって話を聞いたことがあるし。満足して休憩のために一旦宿に帰る。

20:00

ディナーはゆうべ助けてくれたエンゾの店、エノテカ・ソラーリアへ。

「チャーオ!ゆうべは大丈夫だったか?マンジャーモ(食事)はまだか?」

と一気にまくしたてられる。「まだなんだけど、何か作れる?」と聞くと厨房の中に入って何か作り始めた。出てきたのはでっかい餃子みたいなパン。中にほうれん草とジャガイモとツナのようなものが入っていてなかなか旨い。一緒に注文した赤ワインと、かなり気楽な夕食だ。昨日は必死過ぎて気に留めなかったけど、とんでもない量のワイン。酒屋でもあるからその場で飲んでも買って帰ってもいいらしい。メインで、ソーセージ、イワシのロースト、チキンのコトレッタを注文。一人で作って一人で運んで、他の客の相手もしてるからなかなか料理が出てこない。でも必死で動いているエンゾの様子を見ていると微笑ましくてこっちものんびり食事を楽しもうという気になるから不思議だ。ソーセージはスパイス(オレガノとおそらくアニスシード)が効いていて、なかなかの味。エンゾが選んでくれたパンチのある赤ワインとの相性もばっちり。コトレッタもイワシも笑っちゃうくらい素朴で、でもちゃんと素材の味がしてとても美味い。完全に地元の普段の食事。エンゾはたまにテーブルに来て「どうだ、旨いだろ?」みたいなことを言ってどこかに行く。いい店だなぁ。ワインに対する愛情があって、みんながエンゾに元気をもらいに行ってる。客はそれぞれのやり方でくつろいでいてそれでも店全体に共通の暖かいムードが漂っている。

お会計をお願いする時に、アキが「今日カレが誕生日なの」と英語とスペイン語とフランス語とイタリア語を総動員して説明してくれる。そう、今日は僕の32歳の誕生日なのだ。しばらくして伝票と一緒に1本のボトルと3個のグラスがテーブルに置かれる。エンゾが店内にいる客に呼びかける。

「こいつ今日誕生日なんだって。みんなでお祝いしようぜ〜!サルーテ!」

唄を歌うなんてまどろっこしいこと抜き。「ホントは自分が飲みたかったんじゃない?」っていうくらい旨そうに一気飲みしたエンゾにつられて僕とアキも一気飲み。家族と、エンゾと店内にいた6、7人のお客さんにも祝福してもらって、何ともいえない優しい気持ちで32歳の誕生日を過ごしたことは一生忘れないだろうな。

 

6:30

自然と目が覚める。暖房が効いているのに乾燥してない室内はかなり快適。ゆうべ風呂に入らず寝たので目覚めに熱いシャワー。

7:30

朝食。昨日と同じ内容。カプチーノは今日もちょっと薄くイマイチ。近くに座った白人が娘の事を興味深そうに見ている。きっと黄色人種の子供が珍しいのだろう。

9:00

「シチリアに出発する前に、山下くんを誘って近くのバールに行こう」ということになり、部屋まで誘いにいくと、彼もそう思ってくれていたらしく快諾される。そしてその場で彼が働いているイタリアンレストランが出したレシピ本を見せてもらう。写真や絵の質感、コメントなどとっても好きな感じ。日本に戻ったら是非行ってみよう。


ゆうべのピッツェリアの方に歩いていくとカウンターに何種類ものパニーニを積んだ店を発見。迷わず入るとお昼に向けておじさんが黙々と作っている。モッツァレラ/トマト/バジル、プロシュート/ルッコラ、グリルしたナス/ズッキーニ/チェダーチーズ等々、見てるだけでよだれが出てくるくらい旨そう。とりあえずカプチーノを注文。うん、旨い。味がしっかりしていて、ミルクとエスプレッソのバランスもいい。シチリア行きの飛行機の中で食べるためにパニーノを買っていく。

11:00

フロントでタクシーを呼んでもらって、山下くんに見送られながら出発。彼とはまたどこかで会えそうな気がする。彼が日本に戻ってくる2ヶ月後にはもう僕の店はオープンしているだろう。

11:40

ミラノ中央駅からプルマン(高速バス)でマルペンサ国際空港まで移動。娘は腹が減ったらしく、さっきのパニーノ(ハム/チーズ)をぱくついている。イタリアでも彼女の食欲はおさまるまるところを知らない。

12:30

空港に到着。国内線で、時間的に余裕があるので朝買ったパニーノをビールで流し込む。生ハム、モッツァレラ、ルッコラのパニーノとズッキーニ、ナス、ほうれん草、カマンベールのパニーノ。どちらも冷めていたけどとても旨い。生ハムがびっくりするほどしょっぱかったが、ちょっと安心する。ベーコンやパンチェッタ、生ハムは本来保存のための冷蔵技術が今ほど優れていなかった時代の知恵で生まれた食べ物。しっかり塩漬けして、時間をかけて乾燥なり、薫製させるから長持ちし、うまみが凝縮されている。でも日本で売っているそれらのほとんどは塩気の代わりに大量の保存量と旨そうに見せるための着色料で漬けられている。塩気を嫌がる消費者に媚びているのと、簡単に安定したものを作れるからなのだろうが、はっきり言って迷惑だ。こっちのハムやチーズはどれもしょっぱい。でも日本のものよりずっとおいしい。

14:25

ミラノ発カターニャ行き、定刻通り出発。easyJetという格安航空会社で、機内のサービスが全くない分とても安い。途中、機内で買ったトマトジュースがトマトを飲んでるみたいに凄く濃厚。旨い。そして、窓の外から地中海のきれいな景色が見える。青い海、遠くに見える島。

16:20

シチリアの東、カターニャ空港に到着。デッキに降りるといきなり暑い。そりゃそうか。北海道から九州に来たようなものだ。

出口に今回の旅でお世話になるAKIさんとパートナーのFRANKが出迎えに来てくれている。シチリアでの最初の3日間はシラクーサという街のフランクの友人のフィリッポのB&B(ベッド&ブレックファースト)に滞在するが、フィリッポがベルギーに出張中のため、部屋の鍵をAKIさんが僕らに渡してくれることになっていたのだ。AKIさん達と、4日後の再会を約束して別れ、バスの時間までバールで食事をとることに。ここのパニーノも見事においしい。きっとひとつひとつの食材がいいからだろうな。

終止こんな格好で歩き回る

17:40

すっかり辺りは暗くなった頃にシラクーサ行きのバスが出発。バスは結構混んでいて、外に見える景色はなんだか南国のよう。運転手の流すイタリアの歌謡曲がみょーにタイポップスみたいで笑える。同じイタリアでもこんなに違うものなんだな。バスの中でアキと到着してから宿までの地図を確認する。辺りはすっかり暗く、窓から見える景色は寂れていて、タイの田舎にいるみたいだと話す。雰囲気的にはかなり悪い。こんな街に夜たどり着いて本当に大丈夫なのだろうか?

くやしいくらいカッコイイゴミ箱

19:00

バスが到着。本当は終点は郵便局前なはずなのに(地球の歩き方情報)、違う場所で降ろされる。娘は寝ていてアキがだっこ。全部の荷物は僕が持ち、かなりの警戒態勢の中とりあえずもっと明るいところへ行ってタクシーを拾おうということになる。ちょっと歩いたところにシラクーサ駅があり、タクシーがいる。話しかけるが英語は通じない。アキが片言のイタリア語(アキは大学の第二外国語でスペイン語を結構真面目にやっていたから、イタリア語もちょっとは話せる)でプリントアウトしてきた地図を片手に説明すると「スィースィー」とおっちゃんは答える。どうやら分かってくれたらしい。とりあえず安心して車に乗るとメーターがない。「もしや、また白タク?」と思って「メーターは?」と聞くと「定額だ」と言っている。どうやら本当らしい。そうして連れて行かれた場所で、「ここからは入れないから後は歩いて行ってくれ」と言われ地図をながら必死で歩く。住所を頼りにようやく見つけた数字の「86」。入口の扉を開けると・・・中は中世の遺跡みたい。もう怖くてちびりそうになりながら、電気を付けながら3階まで昇っていくと

「バチン!」

という音と共に辺りは真っ暗に。

「あぁ、終わった。よく分からないけど、ここで全部終わりだ。」と一瞬思いながらも持っていた携帯電話のモニターの明かりを頼りにもう一度電気を付ける。どうやら一定の時間が経過すると自動で電気が消える仕組みらしい。ようやく3階までたどり着いたのに、またトラブル。今度はなんと

「ドアが開かない」

この木のドア、鍵は入って回るんだけど、どうやっても開かない。がんばって開けようとしているとまた「バチン!」で真っ暗に。ホント、勘弁して。15分近く格闘して、それでもダメだったからAKIさんに電話してみることに。「回しながら押したり引いたりしてみて」とのこと。確かに開きそうな感触はあるんだけど、どうやっても開かないのだ。気づくと娘も起きていて「そんなに(ガンガン)やったらこわれちゃうよ〜」と。そして、旅行前にAKIさんから「シラクーサで困ったことがあったらエノテカ(酒屋)のエンゾというひとを頼ってみてください」と言われていたのを思い出し、持ってきた荷物はドアの前にチェーンロックでくくり付け、一路エンゾのところへ。エンゾが怖い人だったらどうしよう・・。とか思いながらも他に選択肢はない。500mくらい石畳の夜道を歩くとあった!エノテカ「ソラリア」。中に入り「ボナセーラ!エンゾ?」と尋ねると70年代のジーコみたいな人が手を挙げた。笑顔がとても素敵だ。「助かった〜、この人ならなんとかしてくれる」と内心思う。アキが「フィリッポの宿に来たんだけど鍵が開かない。助けてくれないか?」と英語で言うとさっぱり通じない。どうやらイタリア語しかだめらしい。困っているとエノテカの客に英語を話せるイタリア人がいて通訳してくれる。以下エンゾ「分かった。この鍵を持ってもう一回チャレンジしてみろ(と青い別の鍵を渡される)。それでもダメならキミら(アキと娘)はもう一度ここに来なさい。キミ(僕)は荷物の前で待ってなさい」とかなり具体的な指示が飛ぶ。急いで宿に戻り、試して見るがやっぱり開かない。もう、鍵を強く握りすぎていて手の皮がひりひりする。アキと娘だけであの夜道を歩いていかせるのはちょっと危険なので僕も一緒にまたエンゾのところまで行く。店に入ると「あれ?ダメだった?なんでお前も戻ってきたんだ?」と怒られるが、説明できない。「ちょっと待ってなさい!」といって店の奥に入ると「フィリッポ〜!お前のところの客のジャポネが来て鍵が開かないって言ってるぞ〜!」と大声で電話をしている。ベルギーまで国際電話をかけているのだ。こんな状況なのにかなり笑える。エンゾは店に残っていた何人かの客を残して(エンゾは一人で店を切り盛りしている)一人で宿の方へすたすた歩き始める。僕らも負けじと追いかけるがかなり早い。途中僕の方に手を差し出されたので握手し返すと「違う!鍵だよ鍵!」と怒られる。この辺、お互いぜんぜん言葉が通じないのにどうやって会話をしていたんだろうか?そしてもう一度手を差し出されたので今度こそ握手だろうと思って握り返すと「だから違うって!もうひとつ鍵を渡しただろ!それだよそれ!」とまた怒られる。もう笑うしか無い。でもエンゾは真剣そのもの。なんたってこの訳の分からない客のトラブルを解決して、早いところ店に戻らなきゃいけないんだから。エンゾが鍵を差し、前後に「ガクッ、ガクッ」と何回かやると

「開いた!」

どうやら鍵が潮風で錆び付いていて開きにくくなっていたらしい。エンゾは台所から食器用洗剤を持ってきて鍵に刷り込んでいる。「これでとりあえずは大丈夫だから。明日、また油を注しに来てやるよ」と言ってこれまた急ぎ足で行ってしまった。

 

しかし、なんて夜だ。

イタリアは本当に先進国なのか?

 

写真は後から撮影したもの。実際ほぼ真っ暗

86。暗くて探すのが大変だった

気分は探検家。ミイラとか、ピラニアとか。

このドア。死んでも忘れないでしょう。

命の恩人 エンゾ

6:00

目が覚め、携帯の時計を見るとまだ6時。セントラルヒーティングのおかげで室内は暖かく、とても快適。ミラノはイタリアの中でもかなり北の方で緯度は北海道と同じくらい。窓を開けて外を見るとまだ薄暗く空気がひんやりしていてとても寒い。眠ってしまうのがもったいなくて、ベットライトで昨日のスポーツ新聞を読む。

7:30

朝食は1Fでビュッフェ。中に入ると「ボンジョルノ。カフェ?」と聞かれる。分からないという顔をしていると「カフェ、カプチーノ、ティー・・・」と言われたので「カプチーノ」と答える。マシンはチンバリの2連。手つきはなかなかだけど、薄くて味はイマイチ。イタリアの朝食らしくブリオッシュを食べる。ブリオッシュも味はそこそこ。モルタデッラ(ハム)とサラミとパンでサンドイッチを作り食べる。こっちはまずまず。

がやがやと食べていると日本人らしき青年が1人で入ってきた。雰囲気や服装から自分と何か近いものを感じる。ビュッフェを取り分けるときの手つきや振る舞いを見てもおそらく同業じゃないかな・・・。部屋に帰って「さっきの日本人の男の子、よっぽど話しかけようかと思ったけど・・・」とアキに言うと「あたしもそう思ってた」との返事。やっぱり。

9:10

すこし早いけど、ミラノをきちんと楽しめるのは今日だけということもあり、せかされるようにしてホテルを出る。最初の目的地はドゥオーモ(大聖堂)だ。シチリア滞在のことばかりに気を使って、ミラノのガイドブックどころか地図すらも持っていなかったので、ホテルのフロントでもらった地図を頼りに歩く。歩き始めて20分くらいした時、後ろから声をかけられた。「誰?」と思って見ると朝ホテルで顔を合わせた日本人だ。

「あっ、ホテルの?」「そうです。後ろ姿が見えたもので」

というわけで、お互い簡単な自己紹介をする。彼の名は山下くん、26歳。代々木のイタリアンレストランでフロアマネージャーをしていて、2ヶ月の休暇をもらいワインの勉強のために来週からフィレンツェの学校に通うらしい。とりあえず今日一日予定も無くぶらぶらするつもりだったという彼を誘い、みんなでドゥオーモまで行く事に。

一歩大通りに出ると、街の佇まいに圧倒される。ゆうべは夜で気づかなかったが、石畳の歩道、木枠のドアを持つトラム(路面電車)、古い街並。どれも本当に素敵。街全体が、以前行った事のあるヨーロッパの他の都市(ロンドン、アムステルダム)よりも「味のある枯れ方」をしている。古い建物は確かに古いけど、古いだけじゃないのだ。僕は「一緒に歳を重ねていけるか?」という基準でものを選ぶ。20歳くらいからずっとそうで、その当時に買った服や靴、鞄も当たり前のように使っている。古さが味に変わるようなものしか選ばない。だから当然高い。だからほとんど買い物をしない。特に結婚してからは金銭的な自由が無くなったという事もあるが、身につけるものをほとんど買わなくなった。ヨーロッパの文化には、そんな僕をわくわくさせてくれる何かがある。

10:15

ドゥオーモはその極みだった。ここまで巨大で、尊大で、真摯な建物を見たのは初めてかもしれない。いったいどのくらいの時間と金が投資されたんだろう。外から見て驚き、中に入ってもっと驚き、エレベーターで上に上がってものすごく感動した。正直、「ミラノコレクション」や「ミラノデザイン見本市」のイメージからもっと近代的な(現代的な?)都市を想像していて、全然期待していなかった。だからこんなに素敵なミラノの街にたった2時間で僕はすっかりやられてしまった。

ドゥオーモの広場に「ABBYROAD/Beatles」の巨大な模型があり、うれしくなって写真をたくさん撮る。デザインはジュリアン・オピー?

12:00

ダンテ通りを城の方に向かって歩き、「ダンテ」というカフェでランチ。マルゲリータ、トマトのリゾット(本当はポルチーニのリゾットが食べたかったのに!無いっていわれた)、アーティチョークのパスタ(ペンネ)を4人でつつきながら食べる。食事はう〜ん、ツーリスト向けかな。食べながら、山下君とお互いの事を話す。飲食畑、しかもお互いイタリアンだから、ものすごく話が通じやすい。バリスタを本業として、普段はフロアマネージャーをしていること。これから2ヶ月イタリアに滞在して、翌週からワインの学校に通うこと。平日は3食と宿舎までついているからどっぷり勉強。出来ればこっちでソムリエの資格を取りたいこと。週末はフリーだからいろいろな街を回ってみたいこと・・・。しかも彼は何度かD&Dに来た事があり、彼が働いている店「LIFE」はDと関係が深いTRUCKの家具をたくさん置いているそう。なんでそんなにツボな店なのに今まで知らなかったんだろ?僕の方は、自分がこれからやろうとしている店について話し、彼の意見を求める。帰ってくる答えが若いのに鋭く、的確。いや、若いのにっていうのは違うな。若いとか先輩とか、そんな事はもう関係ないんだろうな。彼と話しているとそんな風に思う。僕もこのくらいの年齢でイタリアに来れていたら、何年か滞在していたら何か変わったかな。いや、それも違うな。来れたらじゃなくて、来れなかったんだし、今来るべくして来たのだと思おう。でも、ちょっと彼の若さと自由さがうらやましくなる。それはただのないものねだりなのだろうか?

13:00

ミラノの建造物としては一番大きいというスフォルツェスコ城の中を散策する。とにかくでかいが、でかいだけで、感動は伝わってこない。走り回っていた娘が、アキにだっこされたまま寝る。

14:00

ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」を見にサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会へ。

まだ時間があったので、目の前のバールで一息。イタリアでの最初のエスプレッソ。う〜ん、普通。砂糖を入れると角が取れ、いい味に。今回の旅行、バールの視察も大きな目的だから、バリスタの動きをじーっと眺める。早い、けど、雑。これがイタリア流なのだろうか?

15:45

最後の晩餐を見るためには事前予約が必要なため、山下君とはここで分かれる。かの有名な絵画。実際に見ると想像以上にでかくて、なのにとても静かなものだった。つまらないというのではない。その逆で、静かにものすごい迫力で迫ってくるものがある。反対側にも同じくらいの大きさで書かれた絵があるのだが、もう比較にならない。感動で背中の辺りがぞわぞわする。ここに来る事が出来てよかった。

16:30

別の道を通って、ドゥオーモ経由でホテルの方までまた歩く。ミラノにはとにかくバール、カフェが多い。店の参考にするために、持って来たデジカメでどんどん写真を撮影する。娘がずっと「だっこ」になってしまい、アキが辛そう。歩きながら夕飯をどこで食べるかをずっと考える。結局、アキが日本で調べたピッツエリアに行こうという事になったんだけど、大体の住所と、頭文字に「M」が付くということしか手がかりが無く、付近をさまよう。ようやく発見するも、19:00開店。隣のマックで時間をつぶす。

19:00

入口で「子供がいるけど大丈夫?」と聞くと、「もちろん。気にすんなよ(著者訳、というか推測)」というラフな答え。入るとすぐにどでかい薪の釜があり、腹の出た兄ちゃんが手つきよくピッツアを焼いている。みょーに人懐っこい店員がテキパキと対応してくれる。いかにもピッツエリアという感じ。ラフだけど、気が利いていて気持ちがいい。こりゃ料理も期待出来そう。ピノネロのハーフボトル、魚介のマリネサラダ、マルゲリータを注文する。白ワインが、歩き疲れた体に染み渡る。旨い。魚介のサラダもなかなか。海から遠いミラノでもこのくらいのものは出せるんだ。そしてマルゲリータ。うん、旨い。あの兄ちゃんの腹も伊達じゃなかったって事だ。生地はやや厚め。もう少し食えそう、という事で昼間食えなかったポルチーニのリゾットを追加する。これがマジで旨かった!本当に本当にシンプルな味だけど、ポルチーニの食感、チーズの風味、だしの効いた味付け。はぁ〜、これがイタリアの味なんだね。ミラノで旨いリゾットが食えてよかった。デザートにジェラートミスト。これはまぁ普通かな。悪くないけど、びっくりはしない。アキはカフェ。ミラノ初日から旨い店にたどり着けて満足。

21:00

ホテルへも歩いて帰って、疲れきってそのままベットにバタン。風呂は明日の朝にしよう。変なテンションのまま寝る。

10月22日 1日目

 

5:00

ほとんど寝ないで出発の朝を迎える。

朝食は昨日のうちに買っておいたアンパンと缶コーヒー。

6:00

自宅の前から水戸駅までのバスに乗る。荷物は大きめのキャスター付きとバックパック。3人分が詰まっており、とんでもなく重い。途中コンビニで梅のおにぎりを買い、1個ずつ食べる。

7:00

成田までのリムジンバスに乗る。高速で行くのかと思いきや、なんと海沿いの一般道をひたすら走るルートだった。水戸から成田はまっすぐ南だから常磐道より一般道の方が早いようだ。ほとんど信号もないし。

いつの間にか眠っていたらしく、隣でもぞもぞしている音で目が覚める。ぱっと見ると娘がさっき食べたおにぎりを「げー」してる。僕に似て乗り物に弱い。まったく、幸先のいい旅の始まりだ。アキのジーンズが結構汚れ、成田で何か着替えを買おうという事になる。携帯で調べるとユニクロがあるらしい。おそるべしユニクロ。

9:30

成田到着。さっそくユニクロでストレッチのスキニーを買うアキ。履き心地は抜群らしい。大概の日本人がそうするように、出発前に和食を食べる。天丼、たぬきうどんを3人でシェアする。銀行で1万円分を両替。70ユーロになる。レートは¥140/1ユーロ。飛行機のチケットを押さえた8月頃は¥170だったから、随分安い印象。

4:25(ここからイタリア現地時間)

アリタリア航空787便、定刻通りミラノマルペンサ国際空港に向けて離陸。機内は思いのほか快適。

5:30

飲み物が配られ、ビールを頼む。凄く良く冷えていて、旨い。一気に飲んで、次は赤ワイン。ドリンクのサービスはこの2杯だけで、後はセルフサービスのドリンクバーが機内後方にあるとのこと。飛行機でドリンクバー?なんだそりゃ?機内食は牛すね肉の赤ワイン煮込み、トマトのラザニア、生ハム/サラミ/インゲンのマリネ、フルーツ/パン/チーズ/クラッカーと凄いボリューム。どれも機内食にしてはかなり旨い。娘のハンバーグなんて、そこらのファミレスより旨かった。根が単純だからか旅行でハイテンションだからか「あぁ、美食の国に行くんだぁ」とか訳の分からない事をひとりでつぶやく。

 

9:30

機内でおにぎりが配られる。赤ワイン、チーズとクラッカー。チーズが濃厚で旨い。酔いに任せてうとうとするも、となりで娘がもぞもぞするたびに起きてしまう。

16:00

2回目の機内食。今度は軽めで生ハム、サラミ、ポテトサラダ、パン、クリームのケーキ、クラッカー、チーズ、赤ワイン。ハムが旨い。

17:50

日本時間深夜1:50、ようやくミラノに到着。ここからミラノ中央駅まで1時間ほどバスで移動。娘は着陸前から寝ていてアキがだっこ。ちなみに14キロ。既に外は暗く、どことなく不安がよぎる。

18:50

バスを降りて、タクシー乗り場を探す。ちょうど目の前で人が降りたタクシーがいたから乗ろうとすると乗れないという。理由を聞いたがイタリア語で分からない。すると近くにいた男が「TAXI?」と声をかけてくる。「大丈夫、オレに着いてこいよ」と言われ着いて行くとタクシー乗り場が見えた。バスを降りた客で、既に凄い列だ。でも男はそのちょっと先にいる別の男に声をかける。そいつの車は普通の乗用車でどうみてもシロタク。試しに「ホテルセンピオーネまでいくら?」と聞くと15ユーロだという。うん、こいつ明らかにボろうとしてる。諦めてさっきの行列の最後尾に並ぶ。初めての街に夜到着するのはやはりちょっと怖い。

20:30

日本時間午前4:30。ホテル到着。水戸を出てから丸一日。ホテルは一応三ツ星らしい。ダブルに子供用のエキストラベットをつけて一泊99ユーロ。ミラノの相場からするとかなり安い。少し腹が減っていた気がするが、3人ともぐったりで、僕はビール、アキはスプマンテを部屋の冷蔵庫から飲んで、泥のように眠る。