1月24日 雪
市場から戻ってくると、パラパラの雨が雪に変わっている。しかも結構本降り。この辺は年に2度くらいある種義務的で、投げやりな降り方をする。なんでだ?照れてんのか?
ランチはこんな天気の割には結構お客さんが来てくれる。というかかなり賑わっている。外は寒いけど、中はポカポカでなんだかいい雰囲気。ラストオーダーをちょっとまわった頃、D&Dの鈴木さんと息子のコタが来水。もう他にお客さんがいないから貸し切り状態。コタはうちの娘と同級生なのにもう20キロもある!らしい。いや、でかいよ、それ。ちなみにうちのは15キロ。それでももう抱っこするには重すぎる。そしてさすがによく食べる。そして元気!帰り際「今度ねぇ、コタが料理作ってあげるよ!」との捨て台詞を残していく。頼もしい。

ディナー。雪は止んだけど、相変わらず寒い。
僕の父母が来店。去年まで年に2回会えばいい方だったのに、最近はほぼ毎週のように顔を合わせている。店を出すのにずいぶんと心配や苦労をかけてしまったけど、家族の絆はずいぶん深まったように思う。疎遠になりかけていた親戚のおじさんやおばさん達も、なんだかんだよく来てくれる。うれしいし、ありがたい。
不思議なことに父は最近ワインをよく飲んでいる。もともと酒は大好きで、これまではビール/焼酎/日本酒のみだったが、blackbirdに来るようになってから変わったようだ。
1杯目:ハイネケン :サーモンとオリーブのサラダ
2杯目:白トレビアーノ :ハマグリ、アサリ、カラスミのペペロンチーノ
3杯目:赤サンジョベーゼ:和牛ほほ肉のラグー 手打ちのフェットチーネ
注文の仕方もなかなか見上げたものである。酒飲みの勘なのか、勉強してるのかわからないけど。そのうち
「じゃあ今日はとりあえず泡で」とか
「これはなかなかマリアージュするねぇ」
とか言うんだろうか?マリアージュって・・・。ヌマタトシカズ・61歳。還暦にしてワインに目覚めるんだろうか? いや、ないな。でも美味そうに飲んでいるからわからない。
ラストオーダーが終わってホッとしていると、おっちゃんが一人入ってくる。
「まだ大丈夫?パスタが食べたいんだけど・・・」
「もちろん大丈夫ですよ」
急いでパスタ茹で用の鍋に火を入れる。
「いや〜、遅くに来ちゃって悪かったね。でも断られたらどうしようかと思ってたんだよ。実はオープン前の工事してる時からずっと気になっててね、ようやく来ることが出来たんだよ」
カウンター越しに話す。店内はもうおっちゃんだけだ。水戸に来て6年目。単身赴任。出身は関西。今日は昼間ゴルフをしたけど、雪がひどくてハーフであがったんだそう。
注文はトレビアーノダブルッツォとハマグリ、アサリ、カラスミのペペロンチーノ。最近のおじさんはなかなかマリアージュというのを分かっているらしい。
「この白ワイン、なかなか美味いね。僕はワインには全然詳しくないんだけど、これが美味しいというのは分かる」
そしてパスタを塩ラーメンかざるそばかのように大きな音ですすり、美味そうにワインを飲み干す。凄い美味しそうに食べてくれるから、残っていたフォカッチャをプレゼントすると、パスタの皿に残った汁をまるで洗ったかのようにきれいに拭って食べてくれる。
「帰ったら洗濯物干さなきゃ。出てくる前に洗濯機回してきたんだよね。いや〜、美味かった。いい店だね。また来るね」
フジオ「素敵な帽子ですね」
おっちゃん「だろ?」
滞在時間25分。おっちゃんは不思議な余韻を残し、風のように去って行ってしまった。
たったこれだけのことなのに、僕の心ははうれしさに破裂しそうになる。また来てくれるかな。来てくれるといいな。
来てくれるお客さんの日常にとけ込んで、生活にほんの少し「充実」や「楽しさ」をプレゼント出来るような店でありたい。些細なことかもしれない。でも些細なことの積み重ねで人生は出来ていて、それをおろそかにしないことが本当の豊かさだと思う。